サーキュラーエコノミーとは? ~企業事例に学ぶ新しいビジネスモデル~

サーキュラーエコノミーとは? ~企業事例に学ぶ新しいビジネスモデル~

近年、新しい経済発展のモデルとして注目される「サーキュラーエコノミー」。

資源やエネルギーの過剰消費、気候変動などをはじめ、人間の消費活動が環境に及ぼす影響はさまざまな社会問題を生み出し、解決のためには世界で一体となって協力することが求められています。

サーキュラーエコノミーは、大量消費社会が抱えるさまざまな問題を改善しつつ、経済的にも価値を創出する画期的なコンセプトとされ、日本でも行政を主体に推進が進んでいます。

この記事では、そんなサーキュラーエコノミーの意味や背景、国内外の取り組みの事例について解説します。

■サーキュラーエコノミーの定義とは?

サーキュラーエコノミー

サーキュラーエコノミーとは、「資源の循環を前提とする経済」のこと。

環境省の定義によれば、従来は廃棄物になっていたものを材料として再利用し、資源を循環させることで資源消費や廃棄物の発生を抑えることを目指す経済システムのことです。「循環経済」「循環型経済」ともよばれます。

従来のリニアエコノミーは、大量消費・大量廃棄を前提に構築されており、環境汚染や生態系の破壊など、さまざまな社会問題を抱えていました。それに対し、サーキュラーエコノミーは、限りある環境資源を有効活用し、地球全体の持続可能な発展を支えるための新しい考え方なのです。

■サーキュラーエコノミーでビジネスはどうかわるのか?

近年、サーキュラーエコノミーへの転換は世界中で推進されており、企業からの関心も集まっています。そんなサーキュラーエコノミーによって、ビジネスにはどんな影響があるのでしょうか?

-関連市場の拡大

アクセンチュア株式会社の調査によれば、2030年には世界におけるサーキュラーエコノミーの経済効果は約540兆円にのぼると見られ、大きな価値が生み出されることが予想されています。

日本国内でも、サーキュラーエコノミー関連の市場は2030年には80兆円にものぼると予想されています。

内訳としては原材料やエネルギーの回収、遊休資産のレンタルに代表されるシェアリングエコノミーなどがあり、これらの新市場に事業を展開したり、投資したりする企業がますます多くなっているのです。

-消費者の心理的変化

モノやサービスが変化すれば、消費者の価値観にも変化が起こります。

従来の価値観では、新品の製品を手に入れたり、自分専用のものを所有することに価値があるとされていました。しかし、サーキュラーエコノミーをはじめとするグローバルな環境への配慮が推進されるようになり、経済的にも価値のあるサービスや製品が台頭するようになって、モノの購入や所有よりも「体験」に価値を見出す消費者の傾向が高まってきています。

たとえば、遊休資産である自動車を利用したカーシェアが良い例です。自分専用の車を所有するよりも車に乗る体験の価値を重視し、必要に応じてカーシェアを利用するほうが経済的かつ便利だと考える消費者はこの先も増えていくでしょう。

■海外の先進事例

海外では、サーキュラーエコノミーに向けた先進的な企業の取り組みが既に多く見られます。ここでは、環境先進国であるオランダの企業の取り組みを3つご紹介します。

-豊富な環境アイデアがつまった複合施設「CIRCL」

オランダの大手銀行であるABN AMRO(エービーエヌ・アムロ)が建てた複合施設「CIRCL(サークル)」は、サーキュラーエコノミーのコンセプトを体現する施設です。

レストランやバー、オフィスなどが立ち並ぶのは、さまざまなリサイクル素材を使い、解体時の環境負荷を小さくするためにデザインされた建物。太陽光発電機や雨水タンク、自転車をリサイクルして作られたベンチなど、施設内には取り組みのヒントになるアイデアがたくさん詰まっています。

-スマホの再生に取り組むスタートアップ「Closing the Loop」

スマホの再生利用に取り組むスタートアップ企業「Closing the Loop(クロージング・ザ・ループ)」は、アフリカで廃棄行きとなった携帯電話を回収し、ヨーロッパの製錬所に販売する事業を展開しています。

ガーナをはじめとするアフリカでは、電子廃棄物の処理が問題となってきました。電子廃棄物を適切に処理することができないアフリカの地域では、ゴミ集積場でプラスチックを燃やしたり、埋め立てたりすることによる環境汚染や健康被害が起こっていたのです。

「Closing the Loop」はこの問題に着目し、廃棄物となる携帯電話を回収、ヨーロッパに持ち帰ってリサイクルするビジネスモデルを構築しました。

この取り組みにはサムスンなどの関連企業やオランダ政府も出資を行っており、高い注目度合いが伺えます。

-ジーンズにサブスクリプションモデルを採用した「MUD jeans」

オランダ・アムステルダム発のジーンズブランド「MUD jeans」は、ジーンズ業界で初めてサブスクリプションモデルを採用し、ジーンズを回収しリサイクルを行うことでサーキュラーエコノミーの実現に取り組んでいます。

仕組みとしては、ジーンズを月7.5ユーロでリースし、1年のリース期間が終わったらユーザーは交換・買取のどちらか一方を選べるようになっています。

このとき回収したジーンズは、繊維に裁断され、新しいジーンズの材料として再利用されます。これにより、なるべく新しいコットンを使用しない循環サイクルを確立しています。

MUD jeansはその他にも労働環境の整備など、サステイナビリティへの積極的な取り組みを行い、ホームページでオープンしているため、ユーザーの信頼獲得とブランディングにも成功しています。

■日本の取り組み状況


-大塚製薬株式会社の「リターナブル瓶」

2022年7月、大塚製薬株式会社は、リターナブル瓶を使用したポカリスエットの販売を開始しました。リターナブル瓶とは、再利用可能な瓶のことです。

リターナブル瓶入りのポカリスエットは「イオン」、「イオンスタイル」で販売され、店頭の返却ボックスから使用済み容器を回収。瓶の洗浄、再充填を行い再び再利用されます。

ちなみに、瓶の回収から洗浄の過程では循環型ショッピングプラットフォーム「Loop」のサービスが利用されています。このように外部サービスを利用しつつ、瓶の再利用を通じて、サーキュラーエコノミーに貢献しているというわけです。

-株式会社VALUE BOOKSの「本だったノート」

全国から古本の買取・販売を行う株式会社VALUE BOOKS(バリューブックス)では、買い取れずに古紙回収にまわる本を資源として再利用し、「本だったノート」として販売しています。

廃棄されるはずだった紙資源をリサイクルし、サーキュラーエコノミーに貢献しているというわけです。

これまでVALUE BOOKSに届いていた1日2万冊の古本のうち、半分の1万冊が古紙として回収されていました。古紙回収された本は再生紙となるものの、別の形で価値を生むことができないかという着想から、この取り組みが始まったそうです。

■サーキュラーエコノミーについてのまとめ

サーキュラーエコノミーについて紹介してきました。

資源の循環による廃棄物の抑制と経済価値の創出を目指すサーキュラーエコノミーへの転換によって、関連市場の拡大や消費者の心理的変化など、さまざまな変化が起こることが分かりました。

国内外の先進事例から、自社の取り組みにも活かせるヒントが得られそうです。持続可能な社会への参入を行い、経済的にも社会的にも価値のある事業展開を目指しましょう。

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