SDGsなどの言葉を日常的に耳にする機会が多くなった昨今、より持続可能な社会や商品が求められています。環境負荷を軽減し、大切な資源を削減するための取り組みは、今や企業にとって必須だといえるでしょう。これはアパレル業界も同様で、近年ではサステナブルファッションが注目されています。
今回はサステナブルファッションの分類や、サステナブルな衣類を選ぶ意義や社会的責任を解説するとともに、国内外で活躍しているサステナブルファッションブランドを紹介します。
■サステナブルファッションの分類を解説
サステナブルファッションとは、衣服の生産から着用、廃棄に至るプロセスにおいて将来にわたり持続可能であることを目指し、生態系を含む地球環境や関わる人・社会に配慮した取り組みのことをいいます。(引用:環境省ホームページ「サステナブルファッション」)
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以下では、リサイクルやアップサイクルなど、サステナブルファッションを実現させるための具体的な手段を解説します。
-リサイクル
リサイクルとは、使用済みの製品や物を原材料に戻して再利用することです。たとえば、資源回収された衣類などは古繊維業者の手で再資源化されます。
また店舗にリサイクルボックスを設置しているアパレルブランドでは、衣類を使えるパーツに分類してテキスタイル資源として利用しているところも。
環境省が発表している「サステナブルファッション」によれば、資源回収や店舗、地域回収などで回収された衣類のリサイクル率は14%とされています。リサイクル率は年々高まっているものの、まだまだ改善の余地があるといえるでしょう。
-アップサイクル
アップサイクルは、元の素材をそのまま活かして別の製品を作り上げる取り組みです。たとえば、国内大手繊維メーカーの倉敷紡績株式会社はエドウィンと連携し、デニムの裁断くずから繊維製品やプラスチック製品などへのアップサイクルを実施しています。
アップサイクルはリサイクルと違い、衣類を原料に戻す過程で生じるエネルギー消費がありません。そのため、リサイクルよりも持続可能性が高い手段として注目されています。
ちなみにアップサイクルと混同されがちな手段としては、ダウンサイクルがあります。ダウンサイクルは利用しなくなったTシャツを雑巾として使うなど、元々の商品よりも価値が低くなる点がアップサイクルとは異なります。
参考:環境省「サステナブルファッション デニム裁断屑を再利用したアップサイクルへの取組事例」
-リユース
リユースは、衣類をそのまま再利用する手法です。たとえば、株式会社ファーストリテイリングの「ユニクロダウンリサイクル」や、日本環境設計株式会社が運営する「BRING」などでは、着られなくなった衣類の回収・リユースを行っています。
環境省が発表している「サステナブルファッション」によると、手放された衣類のうちリユースの割合は20%。リサイクルよりは多いものの、こちらもまだまだ改善の余地があるといえるでしょう。

-フェアトレード
フェアトレードは、公平・公正な貿易という意味です。開発途上国の原料や生産される製品を適正価格かつ継続的に購入することで、生産者・労働者の生活環境を改善させることを目的としています。
サステナブルファッションにおいては、商品タグや表示ランベルなどを用いてトレーサビリティの確保をすることで、サステナブルな素材を使用しているかどうかを消費者に伝えられます。
フェアトレードとサステナビリティは密接に繋がっており、後述するSDGsにも大きな関わりがあります。
参考:フェアトレードジャパン「フェアトレードとサステナビリティ」
■サステナブルファッションを選ぶ意義とは?
サステナブルファッションを提供している衣類やブランドを選ぶ意義としては、環境負荷を減少させたり、一人ひとりが果たすべき社会的責任を負ったりすることが挙げられます。
以下で、サステナブルファッションを選択する意義や、求められている社会的責任などを具体的に解決します。
-SDGsの目標達成のため
SDGs(Sustainable Development Goals)とは、持続可能な開発目標のことで、2030年までに持続可能な世界を目指すための国際的な指標です。指標は17の項目と169のターゲットから構成されています。
このなかで、とくにサステナブルファッションと関係性が深いのは、項目12の「持続可能な生産消費形態を確保する」です。本項目はさらに11種類の分類がされていて、12.5には「2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する」とされています。
衣類をメインに扱うアパレルメーカーも、廃棄物の発生防止・削減や、再利用・生成利用などのさまざまな取り組みを行い、サステナブルファッションを通じてSDGsの目標到達にチャレンジしています。
参考:外務省ホームページ「JAPAN SDGs Action Platform」
-衣類の大量生産・大量消費・廃棄を防ぐため
衣類を生産する際には、多くの資源が費やされます。たとえば服を1着作るためには、コットンの生育に大量の水が消費され、さらに化学肥料の使用による土壌汚染が懸念されます。
ポリエステルなどの合成繊維であれば石油資源が使われ、生産過程で排出されるCO2も深刻な問題です。
加えて、日本で可燃や不燃ごみとして排出される衣類の総重量は、年間で50万トン以上にものぼり、95%にあたる約48万トンは焼却または埋め立て処理されてしまうのです。
これらは大きな環境負荷をかける原因となっており、サステナブルファッションによる負荷の低減が重要視されています。

-プラスチックごみを減少させるため
使用後のペットボトルやレジ袋などは、プラスチックごみとして処理されます。プラスチックの年間生産量は過去50年間で20倍にも拡大しており、海洋に流れ着いて小さな破片となったマイクロプラスチックは今や大きな環境問題です。
サステナブルファッションでは、上記の問題解決のためにペットボトル素材から作られた靴紐や、海洋プラスチックから衣類を生産するなどの試みが行われています。
CO2や水の消費だけでなく、すでにあるごみからアップサイクルを行い新たな価値観をもったファッションを生み出すのも、サステナブルファッションが社会に貢献できる手段のひとつだといえるでしょう。
■サステナブルファッションを実現しているブランド事例
サステナブルファッションへ積極的に関わったり、実際に商品の生産を実現しているブランドは、国内外問わず数多く存在します。以下で、サステナブルファッションを実現しているブランドの事例を見ていきましょう。
- Patagonia(パタゴニア)
世界的に有名なアウトドアブランドのパタゴニアは、1990年代初頭からオーガニックコットンの利用を開始している企業です。1993年にはペットボトルを再利用してフリースを作るなど、早くからサステナブルファッションを実現。今では、世界で最も責任ある企業として知られています。
現在もサステナブルな試みは継続されていて、2025年までにカーボンニュートラルを達成し、化石燃料の使用も停止する予定です。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/patagonia-sustainability-business_jp_5e784fb0c5b63c3b64931ed4
https://www.patagonia.jp/sustainable-apparel-coalition.html
- MUD Jeans(マッド・ジーンズ)
マッド・ジーンズは、2012年にオランダで設立されたデニムブランドです。ブランドを立ち上げたBert van Sonは、ジーンズを生産することで地球に大きな環境負荷がかかるのを抑えるために、オーガニックコットンとリサイクルコットンを採用しました。
また生産過程で生じるCO2の排出量や水の使用量にも気を配っており、さらにすべての製品が有害物質を含んでいないなど、サステナブルな生産方法を高いレベルで維持しています。
https://ethicalconnections.jp/blogs/brands/mud-jeans
- STELLA McCARTNEY(ステラマッカートニー)
ステラマッカートニーは、皮革や毛皮を使用せずに本物の手触りを実現するファーフリーファーや、KOBAという植物由来の素材を開発してバージンポリエステルの削減に取り組むなど、サステナビリティの高い素材を革新的な手法で利用しています。
2008年からはオーガニックコットンを使用していて、2025年までにオーガニックコットンとリサイクルコットンの使用率を100%まで引き上げる予定も。さらに環境負荷の低い金属を使用するなど、実にさまざまな方法でサステナビリティファッションを実現しています。
https://www.stellamccartney.com/jp/ja/sustainability/sustainability.html
- Everlane(エバーレーン)
エバーレーンは、2011年にサンフランシスコで立ち上げられたファッションブランド。「徹底した透明性」を理念として、商品の材料費や人件費などのコストを公開するなど、フェアトレードに積極的に取り組んでいます。
同社はバージンプラスチックの低減を掲げており、再生ペットボトルからアクセサリーや衣類を作るコレクションラインも展開。数百万本のプラスチックボトルをアップサイクルしました。さらに、23年までにすべてのコットンを認定オーガニックコットンに切り替えています。
https://www.everlane.com/
https://www.wwdjapan.com/articles/1104351
- Reformation(リフォーメーション)
リフォーメーションはロサンゼルス発のアパレルブランドで、世界中のセレブに愛好されていることでも有名です。
同社は2015年からカーボンニュートラルを掲げており、二酸化炭素排出の削減に取り組んでいます。加えて、衣類を生産する際に大量に利用される水の消費に関しても積極的で、2015年以降に約9億リットルもの節水を実現。さらに商品の製造工程の透明化も行うなど、フェアトレードの面でも優良企業であるといえるでしょう。
https://celesy.com/fashion/22627/
- O0u(オー・ゼロ・ユー)
ライフスタイルブランドのオー・ゼロ・ユーは、サステナブルファッションの「見える化」を積極的に行っています。公式サイトでは、CO2排出量ならびに水使用量が逐次開示されていて、環境負荷を算出するMSIスコアも公開。ユーザーにも取組内容や効果がわかりやすく解説されています。
負荷の低い天然素材やリサイクルの活用をするとともに、サンプルの削減でもごみの排出量を低減。AIを活用した在庫管理も特徴的です。
https://o0u.com/pages/sustainability#our_transparency
- BRING(ブリング)
ブリングは、「服から服をつくる」とキャッチコピーを掲げているアパレルブランドです。使わなくなった衣類を回収して、自社工場で原料に戻したあと、再び衣類を生産するサーキュラー・エコノミーを実現しています。
大きな特徴は、ポリエステルを何度でもリサイクルできる「BRING Technology」です。回収した衣類の中のポリエステルをポリエステル樹脂として再生し、サステナブルな原料に生まれ変わらせています。
https://bring.org/pages/recyclingtechnology
- CFCL (シーエフシーエル)
CFCLは、3Dコンピューター・ニッティングの技術を活用した商品展開をしているアパレルブランドです。コンピュータープログラミングニットは裁断の必要がなく、ほとんどごみを出しません。そのため、衣類の生産過程で生じる断裁ごみの削減に成功しています。
また、社外パートナーと契約する際には、素材の製造工程・廃棄などの透明性や労働環境などを意識しており、自然だけでなく働く人の環境もしっかりと考えられているのが印象的。トータルでサステナブルファッションを実現している企業だといえるでしょう。
https://www.cfcl.jp/pages/corporate
- Boody(ブーディ)
ブーディーは、2012年にオーストラリアで立ち上げられたアパレルブランドです。農薬や化学肥料が必要なく、かんがい設備の必要もない竹を使用したバンブーウェアを生産しているのが大きな特徴。生地を筒状に編み込むことで、廃棄する生地を削減するなどの工夫も見られます。
また商品の箱や配送用の梱包資材などは、コーンスターチを原料とした再生プラスチックや再生紙を使用しており、衣類だけでなく環境負荷についてトータルで考え抜かれたサステ
ナブルファッションブランドです。
https://www.boody.co.jp/pages/sustainability
- Allbirds(オールバーズ)
オールバーズは、2016年にサンフランシスコで誕生したフットウェアブランドで、立ち上げ当初から二酸化炭素の排出削減を掲げています。2021年には前年比でカーボンフットプリントを12%削減することに成功。2025年までには、さらに半減させ、2030年までにはほぼ0%にすると発表しています。
フットウェアに再生素材や環境負荷の低い素材を用いていることも特徴です。たとえば、リサイクルボトルからは靴紐を作り、ヒマシ油でインソールのクッション性を向上させるなど、随所に革新的な工夫が光っています。商品の梱包材は90%がリサイクルダンボールで作られており、非常に高いサスティナビリティを実現している企業だといえるでしょう。
https://www.allbirds.jp/pages/our-materials-wool
■サステナブルファッションついてのまとめ
今回は、サステナブルファッションの概要や選択する意義、社会的責任を解説するとともに、国内外のサステナブルファッションブランドを紹介しました。
環境負荷を少なくしたり、ごみを削減したりすることは、今後ますます重要になると考えられます。これらの問題を解決するためには、企業だけでなく、一人ひとりが少しずつサステナブルな生活を取り入れていくことが大切だといえるでしょう。
衣類やバッグなど何かしらのアイテムを手にとったときには、その商品がどのような背景をもった企業で作られたかを考えてみるのも、持続可能な社会に貢献できる一歩ではないでしょうか。
【全体を通しての参照リンク】
環境省ホームページ「サステナブルファッション」